2013年3月19日火曜日

前世紀 LOST WORLD


先日博多に行った時、大名にある古本屋さんにふらっと入った時
奥さんから「これ買わなくていいの?」と渡されたのは
手塚治虫の「前世紀LOSTWORLD」だった。
実は、手塚作品にかぎらず持っていたマンガは、
ほとんど手放してしまって、なおかつ手元に置くのを
そんなに増やすつもりもなく、ま、このへんの理由はいろいろ
あるのだけれど、ま、そんなことはともかく
久々に見た、初期手塚作品の絵にやられて購入しました。
ロストワールドを最初に読んだのは、多分小学生の頃、
手塚治虫全集でだと思います。
あの頃、手塚治虫全集って毎月、複数冊出てたんじゃなかったけなぁ‥
集めるのも選ぶのも大変だったもん。
でも、あの頃でもほぼ手に入れるのが不可能になっていた
初期の作品たち、短編などが新しい印刷でたくさん読める
という画期的な試みだったんだと、今になって改めて思います。
「ロストワールド」「メトロポリス」「来るべき世界」‥
何度読んだか分かりませんが、一番影響を受けたのは
今回買ったロストワールドじゃなくて来るべき世界だったなぁ。
なんてことを、今回久々に初期手塚作品に触れて思い出しました。
手塚さんのマンガってあんましハッピーエンドじゃないんですよね。
そこが、またいいところなんですけど。

「ロストワールド」本当に久しぶりに読みましたが、
今読んでも、普通に面白い。これはやっぱりすごいことです。
この本は昭和52年発行の本なのですが、マンガ本編はもちろんですが
買ってよかったと思ったのは、巻末の手塚さんのあとがきです。
そこではロストワールドを描き始めたのが、戦時中だったということ。
(驚きです)エピソードが、すごくいいのでちょっと引用しますね。

(略)ノートで十冊分、ページ数でいうと五百ページくらい。それをまとめて、
肉筆単行本みたいなものを作り、友だちに回覧したところがたいへん
おもしろがってくれて、ある友達などは、電車の中で読んでいると、
隣りに座ったオッさんが盗み読みしていたなどというニュースを
聞かせてくれて、うれしい思いをしました。(略)

何と描いたのが中学生の頃ってのが驚き!ですが、
手塚さんって、このへんのうれしさを、最後まで持っていた
方なんじゃないかと思ってしまいます。きっとそうだったんじゃ
ないかなぁ。

この肉筆単行本を元に単行本になるまでには二転三転あるのですが
ロストワールドにはオリジナルと子ども向けの2作が存在しているのは
今回はじめて知りました。出版するにあたって、も子ども向けに
編集されたものだそうです。あとがきで手塚さんも触れていますが
子ども向けに変更したためにストーリーで辻褄が合わない部分があり、
作者としてはもどかしいでしょうねー。オリジナル版は中学生の頃
描かれたものですし、もう読むことはできないでしょうけど
読んでみたいですねー。

それから、この本の印刷は、当時をしても、けしてほめられたもんじゃ
無いのですが、この本に収録された原稿は「書き版」という
原稿をフィルムに転写する技術が出来る前の版下を作る職人さんが
原画を模写!するという方法で作られたもので、線は手塚さんの
線じゃないそうですが、当時の雰囲気を残すためにそのままにしたそうです。

そしてラスト近くのモブシーン。このへんの遊びも手塚さんが
作ったマンガの方法ですね。
ここに描かれているのは昭和二十二年ごろまでに新聞雑誌に
載っていたマンガの主人公を集めたものだそうです。
マンガだけじゃなくてディズニーのキャラクターもまざっていたり
(最近、コム・デ・ギャルソンで使われたキャラクターもいますね。)
版権だの権利だの無かったのどかな時代ならではの楽しさですね。


「買わなくていいの?」で買って良かった。
久々の手塚マンガにしびれました。



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